栞奈side

日曜日。

幼稚園の運動会。


午前の競技種目は順調に終わって、今はお昼の時間。


よく晴れた青空の下の園庭にレジャーシートを敷いてお弁当を食べる家族。

あたしは職員室の窓からそんな光景を見て微笑んだ。


「なんか、いいですね。
こういうの」

「そうね。
あたしも思い出すわ~……。
栞奈ちゃんなんてつい最近の出来事でしょ」

「そんなことないですよ。
もう20年ぐらい前です」


お父さんとお母さんと一緒にお弁当。

いつものと何ら変わりはないはずなのに、おにぎりがすごく美味しく感じたあの時。


「さて、あたし達も早く食べて次の準備しなきゃ」

「そうですね」


清水先生に言われ、あたしが席に着いてお昼を食べようとした……その時だった。


「栞奈先生、ちょっといい?」


夏目先生が職員室の入り口の方であたしを呼んだ。

立ち上がり、手招きをする夏目先生のところへ行く。


「どうかされたんですか?」


あたしが聞くと、夏目先生は半開きになっていた扉を全開にした。

すると、そこにいたのは……


「……萌ちゃん?」