そこには青ざめた顔をした美波と、
その後ろに
長い髪で顔を隠している女の姿が映っていた。
この車に乗っているのは、
父、母、美波の3人だけ。
いるはずのない4人目に、
美波は肝を冷やした。
「お母さんっ、バックミラーに」
女の人が、と言う前に、
「うわあぁぁっ」
「きゃあぁぁっ」
車はガードレールを越え宙に浮いていた。
美波は強く目を瞑った。
────僕はもう、ここで死ぬのか
そう考えたとき、ふわりと甘い香りが
鼻をくすぐった。
そして何か温かいものに
体を包まれたような感覚になり、
崖を落ちているはずなのに一切の振動も
感じなくなった。
美波は甘い香りに覚えがあった。
───これは、庭に咲いているクチナシの…
