「今、行くよー」


声がする方向に歩く。


「おかーさーん!」


また呼ぶ声が聞こえる。


「クスッ、何度も呼ばなくても聞こえているのに」


「おかーさーん!」


また呼ぶ。しつこいな。

教会のある場所は少し小高くなっている。

緩い坂だけど、登りきらないと入り口は見えない。


「おとーさんがいるよー」


えっ?


私は歩く足を早める。

やっと智咲の姿が見えた。

同時に智咲の隣りに立つ人の姿も見えた。


「咲良…」


「大智…」


ずっと想い続けていた人に会えた。

ずっと会いたかった。

24歳の大智は少し長めだった髪が短くなっていて、大人の男になっていた。