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「おかーさん、もう少しー?」


私の手を握る小さい手。


「もうちょっとよ。ほら、白い教会が見えてきた。


6年振りに見る教会はあの時と変わらず、素敵だった。


「あ、智咲(ちさ)。ちょっと待って」


靴ひもが解けてしまっていたことに気付いて、智咲の手を離して、屈む。


「よし、OK!」


結び直して、立ち上がる。


「あれ?智咲?どこ行ったの?」


智咲の姿が見えない。

子供は小さいくせに意外と動きが早い。ちょっと目を離すとすぐどこかに行ってしまう。


「おかーさーん」


愛娘が私を呼ぶ。