「酷いです!」


取り出したリングをおしぼりで拭きながら、渡部先輩を睨む。


「だってさ、咲良ちゃん、さっきからずーっと寂しそうな顔してる。そんな顔見てたら、かわいそうで堪らないよ。だから、そんなの外してしまえばいい」


「勝手なことを言わないでください!」


私は丁寧に吹いて、きれいになったリングをあった場所に戻す。


大智との約束を守るための証し。

離れていても大智と繋がっている証し。


はめたリングを右手で覆い、握りしめると、気持ちが落ち着いてくる。


「渡部先輩、咲良をいじめないでくださいよ」