不登校中の3月――
その日はたまたま母親が何かの会合に出席していて、俺が1人で自宅にいた。
そろそろ昼御飯にカップラーメンでも作ろうかと1階に下りた時、玄関のチャイムが不意に鳴った。
モニターを覗くと、濃いグレーのスーツを着たの男性が立っていた。
「はい」
「あの私、損害保険会社の田坂と申します。先日の件につきまして、お話ししようと思い伺いしたのですが…」
その人は、俺をはねた車の運転手が加入していた自動車保険の事故処理係の人だった。
俺は何がどうなっているのか全く聞かされていなかったが、追い返す訳にもいかず、玄関に行き応対した。
何となく話を聞いていたが、そこで俺は思いがけない事実を知らされる事になった。
父親が相手の提示した示談の話を蹴り、納得がいかないと交渉が難航しているというのだ。
実の息子が重体だったにも関わらず、一度も見舞いに来なかった、あの父親がである。
.



