教室前の廊下を、後ろの出入口に向かって歩いていると…

薄いスリガラスの向こう側から、数人のクラスメイトの声がしてきた。


「――…長谷川君って、何で登校して来たんだろうね?」

「そうだよね。
今更登校しても、もう進級出来ないのにね…」

「女がいるからだろ?」

「いーや、もう別れてるよ。
ほら…
隣のクラスの奴と一緒に帰ってるじゃん」

「じゃあ何しに学校来てるの?」

「さぁ、分からないけど…

でも、進級出来ない人が同じクラスにいると何か気を遣うよね」


「来なければ良いのに――」



俺は想像すらしていなかったクラスメイトの本音に、愕然としてその場に立ち尽くした。


俺は例え進級出来なくても、残り僅かな時間をクラスメイトと一緒に過ごしたくて戻ってきた。

クラスメイトも、俺の事を待ってくれているものだと信じ切っていた…


しかしそれは疑う事を知らなかった俺が描いた、独りよがりに妄想でしかなかったのだ。


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