俺の右側で智香が泣き崩れ、必死に謝りながら叫んだ。

「ごめんなさい…
ごめんなさい!!

だって大樹…
一番必要な時に、私の側にいなかったじゃない!!」


その言葉が、俺の心に深く刺さる。

確かに俺はいなかったが、俺が去った訳ではく、自分ではどうする事も出来なかったんだ。


切れた唇を右手の甲で拭きながら、祐司が立ち上がった。

「言おうと思って、お前の所に行っていたんだけど…
どうしても言い出せなかったんだ。

ほら…
好きなだけ殴って良いぞ!!」


言おうと思えば、いくらでもチャンスはあった筈だ。
それを適当に体裁を繕いながら誤魔化してきた事は、俺には分かっていた。

この時だって、ただのフリだという事は見ていて分かった。



だが俺は2人に背を向け、持ってきた紙袋を道端に投げ捨てるとそのまま人波に紛れた――…



俺の大一番切なものを、2つ同時に失った瞬間だった。


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