会いに行こうと思えば、会いに行けた。
それなのに退院して1ヶ月以上もの間、俺は智香に会いに行く事をせず、ずっと待っていた。
信じていたものに裏切られ、大切なものを失う…
そんな想いが、心の隅にあったのだろう。
クリスマスイブの午後――
冷たい冬の雨が降る中、俺は意を決して智香に会いに行く事にした。
どれだけ1人で考えてみても、何の解決にもならないし…
何より、クリスマスのプレゼントを渡しに行かなければと思っていた。
しかしその先には、俺が想像し得る一番最悪な結末が待っていた。
それを知らない俺は、一歩一歩自らの足でその場面に近付いて行った…
俺の自宅は市街地の中心部あり、智香の家は商店街を抜け2キロ程行った場所に建つマンションだった。
近そうだが、徒歩で行くには30分近くかかる距離だ。
.



