「もしもし…」
緊張して電話に出ると、どこか聞き覚えのある男の声がしてきた。
「おぅ、長谷川か?」
「横山?
何でお前が、俺の携帯電話の番号なんて知っているんだよ!!」
「いやぁ、本当に調べるのに苦労したぜ」
横山は中学校の時に異常に仲が悪く、最後はいつも俺が勝っていたが、年中いがみ合っていた奴だ。
そんな奴がわざわざ携帯電話の番号を調べてまで電話してきた訳だから、何とも言えない嫌な予感がした。
その横山が、俺の反応を確めながら嬉しそうに話し始めた。
「お前、あの可愛い彼女と別れたんだな…
俺に見せびらかすから、そんな事になるんだよ!!」
その年の春先、街中を智香と一緒に歩いている時に、偶然横山に遭遇した事があった。
だから横山は、智香の顔を知ってはいた。
とはいえ――
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