「大樹ってね…

凄いひねくれてて、いつも疑心暗鬼で、独りで生きていけると勘違いしてる大馬鹿なんだよね…」


おいおい、何か俺って酷い言われ方だな。


「でもね、良い所もあるのよ。

去年の19歳の誕生日…
1回しか言った事ないのにちゃんと覚えていてくれて、銀の指輪をプレゼントしてくれた。

"19歳の誕生日に銀の指輪をプレゼントしてもらうと幸福になる"
って本で読んだ事があって、ずっと憧れていたんだ…

素っ気なく受け取ったけど、本当は凄く嬉しくて、今でも毎日右手の薬指にはめてる。

大樹は気付いているのかな?


――…多分、気付いてないよね。こういう事には鈍感だから、私の手なんて見ていないと思う…」


ははは…
確かに見てない。


でも、カナが銀の指輪を欲しがっていた事は知っていた。

この部屋の本棚に、銀の指輪についての記事が書かれているページが、きっちり折られている雑誌があることを知っていたんだ。


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