「でも、大樹は生きてるし…
生きてさえいてくれれば、それだけでも――」


カナは身体を起こすと、両手で自分の目をゴシゴシと強く拭くき、俺の方を向いた。

「そうだよね。
いくら可能性がなくても、信じる人が私1人だとしても…

大樹が悪態をつきながら、戻ってくる事を信じないとね」


そう言ってカナは、目の周りを真っ赤にし、涙でボロボロになりながらも無理矢理笑った。



カナ…?


俺の事なんて、何とも思っていなかった筈なのに…

俺と決別してきたどころか、意識が戻らないと言われた俺を待つつもりでいるのか?


なぜだ?
なぜ俺なんかを…



カナは床に座り直すと、俺を抱き上げ自分の目の前に下ろすと背後から抱き締めた。

「もし…
もし大樹の意識が戻ったら、今度はちゃんと素直になろう。

素直に笑って、素直に泣いて、意地なんか捨ててもっと色んな事を話そう」


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