カナは目を潤ませ…
いや、もう溢れ出た涙でくしゃくしゃになりながら、それでも俺を撫で続けた。

「――…病院に行ったら、もう面会謝絶の札は取れていたけど、やっぱり医者が言う事は同じで…
大樹の意識が戻る事はないって。

病室に入って大樹に会ったけど、どんなに話し掛けても…
どんなに耳元で名前を呼んでも、何の反応もなくて…

あんなに綺麗な顔をしていたのに、握り締めた手はあんなに温かかったのに――」


俺を撫でていた手が止まり、床の上に泣き崩れた。



俺は正直、そのカナの姿にかなり驚いた。


俺が仮に死んだとしても、平気な顔で先を見つめる様な女だとずっと思っていた。

今日病院に行くと言った事も、俺と決別する為だと本気で思っていた…


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