僕がこうしてあの湿気の多い、薄暗い路地から出るのは二度目だ。


雨が降り始める前日、まだ夜明け前で、周囲に何があるのか分からない程暗かった。

少し僕には大きい段ボールに入れられ、車でここまで運ばれて来た。


走り去る背中…
僕に残された物は、小さな皿に入れられた僅かなミルクだけだった。


ずっと待った。
迎えに来るのをずっと待っていた。


でも…
誰も迎えに来る事はなく、雨が降り始めて2日目に僕は段ボールから出て、ずっと見詰めていた路地の出口に見える光の中に飛び出した――



急ブレーキの甲高い音と激しい水しぶきの中、僕は抱き締められ…

また僕はここに、
この何も無い薄暗い路地に戻って来た。


もう外に出る事すら出来ない僕は、もう駄目だと思っていた。

もう駄目だと、覚悟を決めていた…


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