訳が分からない。
どうして俺はここにいるんだ?
そもそも、カナがあんな優しい笑顔で俺を見るなんて事は、今まで一度もなかったぞ?
カナの後を追い掛け様と、足に力を込めて立ち上がる――
あれ…
な、なんで俺よりベッドの方が高い位置にあるんだ?
一体何がどうなっているんだ!!
確か雨の日に、このマンションに来る途中…
来る途中に、道路に飛び出した仔犬を助けようとして――
ト、トラックに…
どうして俺はここにいるんだ?
ふと自分の手を見ると、茶色で短い毛が生えている事に気が付いた。
な、何だこの手は…
これではまるで、犬の手じゃないか!!
い、犬…?
ま、まさか俺は犬になっているのか!?
俺は慌てて、クローゼットの隣に立て掛けられていた全身を写せる大きい鏡の前に走った――
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