長かった雨が上がった日の午後、雲間から明るい陽の光が路地に射し込んだ時、僕は不意に抱き上げられた――
驚いて見上げると、髪の長い女性が優しく僕に微笑みかけていた。
笑顔とは裏腹に僕を抱いた手はとても冷たくて、まるで血が通っていないみたいだった。
でも…
余りに柔らかな表情に僕は安心して、尻尾を振って彼女の鼻の頭を舐めた。
彼女は僕をギュッと抱き締めると、そのまま立ち上がって歩き始めた。
「独りなんでしょ?
私が連れて帰ってあげるね」
僕の顔を覗き込みながら、彼女は天使と見間違える程の温かい表情をした。
だから僕は抗う事もせず、そのまま彼女に抱かれて行った。
でもやっぱり僕を抱き締める手は冷たくて、それが不思議でならなかった。
「きゅーん?」
(どうしたの?)
って、いくら聞いても僕の声に気付かないのか、少し俯き気味に歩いていた。
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