カナ…

僕をそんな顔で見ないで。カナを悲しませているのは、僕なんだ。

僕があの日道路に飛び出した時、助けてくれた人がカナの大樹なんだ。


ゴメンよカナ…
僕が勇気を出して目を開けていれば、こんな事にはならなかったのに。



何も知らないカナは、僕の首輪に繋がったリードを引きながらマンションの自宅へと帰った。


「どうしたのダイ?
散歩楽しくなかった?」

耳と尻尾を情けなく垂れ下げた僕を心配して、カナが頭を撫でながら話し掛けてきた。

僕はいたたまれず、カナの手をすり抜けると、ベッドの横に敷かれているマットの上に座った。


そんな僕を見ながらカナは笑顔で立ち上がると、白いタンスの上に置いてあったミニコンポの電源を入れた。


静かな曲調に、女性ボーカルの柔らかい声…
「好きな歌手なの」
そう言ってカナは僕の隣に座った。


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