大学は市内の中心部から少し外れた小高い丘の上にあり、大学の門を抜けてもキャンパスまではかなり坂道を歩かなければならない。

毎日の様に通った坂道はあれほど面倒だったのに、久し振りに登ると意外と新鮮で簡単に登りきった。


カナはキャンパスに着くと授業のあるA棟を素通りし、一番奥のF棟に向かった。

俺は少し首を傾げた。この棟は小講義室ばかりで、主に外国語の講義が行われている。

外国語は1年の時にしかなく、単位も落としていないカナには全く関係ない場所だった。



カナはF棟に辿り着くと、ガラス張りになっている一番手前の教室を外から眺めていた。

カナを見上げると、偶然目が合った。カナは微笑み返したが、目元には涙が溢れていた。


ああ、そうだ…
ここは、俺とカナが初めて会った場所だ。


なぜ今この場所に来るんだ?


.