やがて窓の外が暗くなり始め、表の通りを走る車のライトが時折チラチラと窓ガラスに反射する――
カナはあれから3時間以上、あの場所に座り込んだまま動かない。
俺はどうする事も出来ず、カナのすぐ側に寄り添う様に座っていた。
そしてそれから更に2時間近くが過ぎた頃、既にDVDの時刻表示以外の灯りが無い暗闇で…
カナが呪文の様に、微かに何かを呟き始めた。
その言葉を俺は、必死に聞き取ろうと懸命に耳を傾けた――
それは、カナの悲痛な叫びだった。
「…――選べない。
私には何も選べない…
どうしろと言うの…
私には全てが大切で、何も選ぶ事が出来ない……」
何度も放心状態のまま繰り返すカナの姿に、俺は自分の無力さを呪い…
悔しくて、情けなくて、涙が溢れて止まらなくなった。
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