マンションに帰り扉を開け玄関先にゲージを下ろして俺を出すと、カナは持っていた鞄を思い切り床に投げ付けた!!


俺は驚いてカナを見上げた。

カナは泣いているのか笑っているのか判別出来ない表情で、両手をダラリと下げて立っていた。


そして30分余りそのまま立ち尽くし、突然笑い始めた。

俺はその光景を目の当たりにし、思わずギョッとした。


目の焦点が合っていなかったのだ――


甲高い笑い声が室内に反響し、幾重にも怪しく響き…
カナはその場に座り込んだ。

今度は、俯いたまま動かなくなった…



カナ……

カナの精神的な重圧は、俺だけの事でもう限界だったのではないだろうか?

そこに慎一のストーキング行為…
それに追い討ちをかける、父親の病気。


1人の女の子に背負い切れなくなっても、不思議ではない。


.