そう言えば…
あの日、路地の入口付近に大勢の人が集まって、妙に騒がしかった記憶がある。
カナは、あの時の事を言っているのだろうか?
「帰ろ…」
カナは僕を抱き締めて、足早にその場を離れた。
「あの日大樹は、私のマンションに来る約束になってたの。
誰も信じていない様な冷たい目をしたひねくれ者だけど、約束だけは守る人だった。
それなのに、なかなか来なくて…
連絡もない。
携帯電話も繋がらない。
何か嫌な予感がして、マンション出て大通りに行くと遠くに赤い光が見えて…」
そうなんだ。
あの僕が初めて路地から出た日、カナにも大変な事があったんだ…
僕もあの日――
そうだあの日僕は、路地から出る事が怖くて、通りに向かって目を閉じたまま思い切り走ったんだ…
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