俺は気付いていなかったが、カナはこの時は既に精神的に不安定だったのだろう…
持ち前の負けん気で、それを表面に出す事を防いでいたのだろう。
しかし――
この日を境に、一緒にいると分かるくらい塞ぎ込む事が多くなった。
夜はアルコールを毎日の様に飲み、時折一点を見詰めて涙を流した――
犬の俺にはどうする事も出来ず…
カナの横に座り、せめて独りではないと分からせる為に身体を寄せた。
俺はカナが壊れてしまいそうで、何か儚くて、見ている事が怖かった…
大家が退去を言い渡して4日目、珍しくカナが笑顔で帰宅した。
最近殆ど笑顔を見せなくなっていたカナが、久しぶりに笑っていたので俺も何だか嬉しくなった。
カナは帰るなり留守番していた俺を抱き上げ、ギュッと抱き締めた。
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