c|ёar


大家は強い口調で言い切ると、扉を閉めて去って行った。


カナは大きく溜め息を吐いた後、俺の方に振り返って呟いた。

「ダイと離れるなんて、出来る筈がないじゃない…ね。


引っ越しか…
この部屋は嫌な事があったし、それも良いか」


カナ――…



カナは目に一杯の涙を溜め、それでも我慢出来ずに目尻からポロポロと溢れていた。

「大樹…
ツラいよ大樹…」


流れ出る涙は嗚咽と共に、もう止まる事はなかった。


ずっとずっと我慢していたのだろう。

自分がしっかりしないといけないと、ずっとずっと涙を堪えていたのだろう…


カナは隣の県から大学に進学した為に独りで来ていたし、警戒心の強いカナには大学に特に仲が良い友達がいる訳でもなかった。

俺の事、慎一の事…
ずっと溜め込んでいたに違いない。それが一気に溢れ出たんだ…


.