そう――

ここはあの日、僕が置き去りにされた路地がある場所だ!!

無意識に身体が小刻みに震え、僕は立ち止まった…


カナはそんな僕を抱き上げると、ちょうど僕がいた路地の目の前で…
でも、路地とは反対方向の道路を見詰めた。

僕を抱き締める手に、少しずつ力がこもってくる…


「ここでね2日前、大樹が運送会社のトラックにはねられたの。

大腿部を骨折したけど、他に目立った外傷はないの…
でもね、もう意識が戻る事はないんだって。

路面で頭を強く打って、そのショックの為に呼吸はしていても、もう二度と意識が戻る事はないって…

こんな所で一体何故、あんな事故に遭ったんだろうね」



僕の頭の上に、何かがポツポツと落ちてきて、僕はカナの顔を見上げた。

その瞬間、鼻の頭にまた落ちてきて、それが涙だとようやく気付いた。


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