「散歩に行こうか?」
カナは真新しい赤と黒の細い縄を編んだリードを首輪の金具にカチリとはめ込むと、玄関の扉を開けた。
「ここは一応室内犬は飼っても良い事になってるけど、廊下で大きな声出しちゃ駄目よ」
外に連れ出してもらった事にテンションが上がった僕には、ほとんどカナの声は届いていなかった。
僕は建物の外に出ると、カナの横をウキウキとした気分で歩いていた。
狭い道路のアスファルトの上を暫く歩くと大きな通りに突き当たり、薄汚れた灰色と茶色のタイルが組み合わさった歩道へと曲がった…
僕的にかなり遠くまで来たと思った時、何となく見覚えのある景色が見えて来た。
何故…
どうしてカナは、僕をここに連れて来たのだろう?
ま、まさか――
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