放課後の校内を鳴海は一人歩いていた。

時々教室の中を楽しげにのぞいたり、手に持ったメモ用紙を眺めている…

中庭に出る扉を開くと、秋と冬の間特有の不思議な風が吹いていて、枯れ葉が宙にヒラヒラと舞っていた。

宝石のようにキラキラと輝いている青空を、まぶしそうに見上げながら鳴海は、その建物の角を曲がった。

「あ」

「やあ、千歳…」

鳴海は無表情に手を上げて、千歳に声をかけた。

「…何してるの?」

ふと、千歳の膝の上に乗っている、白いものに気づいて指差した。

「…ここに座っていたら、いつの間にかいたのよね」

千歳は膝の上でドカンと乗っている、白い猫の頭をなでた。

食堂の裏でひなたぼっこをしていたら、野良猫が寄って来たのだ…

鳴海は千歳の隣に腰かけ、食堂の壁に寄りかかると、フェンス越しに見える田んぼを見渡した。 

稲刈りを終えた田んぼには、ワラが延々と干され、のどかな風景が続いている…

「…ところで千歳、これ君でしょう?」

ポケットから、先ほど眺めていたメモを出すと、ヒラヒラとさせた。