「どうした?最近ボーッとしすぎじゃないか」

私が焼きすぎた目玉焼きを口にしながら葵が心配そうに問うた。
申し訳なく、視線を落とすと綺麗な形をした、食欲をそそる半熟の目玉焼きがあった。

葵が焼いてくれたのだ。
私の失敗した目玉焼きは葵が食べてくれている。
俺は江里子が焼いたのを食べたいから、と笑ってくれた。
本当に、私にはもったいなさすぎる彼氏。

「ごめん……」

もう一度謝ると「謝るな」と鋭い声が飛ばされてきた。
驚いて顔を上げると少し目を釣り上げている。
不安になって「葵?」と呼びかけた。

「江里子、謝るのは一回でいい。そんなに自分を責めなくていい。俺が、良いって言ってんだ。気にするな」

険しい顔はみるみるうちに微笑みに変わり、語気を柔らかくした。
涙腺が緩む。
この人はなんて優しいのだろう。