ドメスティック・エマージェンシー

空気を心臓に届けるようにいっぱいに吸い込む。
神聖な空気で換気されると、喉はちゃんと空気を求めて開いた。

息苦しさが無くなり、再び有馬と向かい合う。

「じゃあ、これからどうすんの?」

「……わかんね」

私と有馬の間に風が素通りする。
風に飛ばされそうになった小さな声をしっかり耳でキャッチし、こっそりため息をついた。

葵のことは、家族には内緒だ。
何となく言いたくない。
勿体ないのだ、葵を晒すのは。
嫌いな人にわざわざ言う必要ないだろう。

以前からそう思っていた辺り、私はもうずっと前から家族のことが嫌いだったのかもしれない。
[イイコ]だった私が無理やり、好きだ、と言い聞かせていたのだろう。

だから、有馬を葵の家に連れて行くなど言語道断だ。
しかしホームレス同然の弟を見放す訳にはいかない。

有馬も、両親の被害者なのだ。

私は唸った。
必死に頼れる人を頭の中で次々と浮かべては消していく。