ドメスティック・エマージェンシー

「えっ?」

理解出来ず、聞き返す。
有馬は余裕がないのか、いつもより苛立ちを露わにした。

「だから!友達ん家にいたんだけど出て行ったんだよ!」

「ああ……」

理解出来、頷き返すとまたそっぽを向いた。
これ以上聞かれることを拒んでるみたいだが、しかしすぐに次の疑問が浮かぶ。
何故出て行ったのか。
戻る気なのだろうか……我が家に。

見透かしたように「戻らねえよ」と有馬は一人言のように言った。
膝を抱え、長身なのに小さな子どものように口を尖らせ目を伏せる。

「父さんも、母さんも、俺なんかいらねえだろ。あの人らが大事にしてるのは、世間体なんだから」

有馬の言葉が、金槌のように頭を打った。

[世間体]

ストンと心に落ち、じわじわと毒ガスのように広まる。
途端に息苦しくなった。