ドメスティック・エマージェンシー

「江里子……」

驚くことに、有馬は自ら私の方へ来た。
さっきとは打って変わって、人にぶつかりながら、それでも真っ直ぐに私の方へ向かってくる。
今にも泣き出しそうな表情を見せながら。


「有馬、はいコーラ」

大好きなコーラを手渡すと目を細めてそれを一気飲みしている。
その様を見つめながら、私は有馬から聞いた話を整理した。

有馬はこの数日、行く宛もなくふらふらとさまよっていたらしい。
公園の水で飢えをしのぎ、落ちているお金を食費にし、何とか寒さを耐えて寝ていたという。

しかし、おかしい。

「あなたが出て行ったのって……もう少し後じゃない?」

数日、なんてもんじゃないはずだ。
既に二週間は経っている。

違和感を言葉にすると、有馬はあからさまにバツの悪そうな顔でそっぽを向いて吐き捨てた。

「出て行ったんだよ」