翌日、有馬は消えた。


私たちはあらゆる場所を探した。
父も母も仕事を休み、街中の隅々まで探した。

ようやく見つけた頃にはもう夕方だった。

オレンジがかった、すっかり暗い青い海の中に有馬はいた。
小学生三年生にしては少し高い身長が腰から消えていて、見つけた私は息を呑み、吐き出すように泣き出した。

有馬は死ぬつもりだ。

恐くなって、どうしたらいいのか分からなくて、何も出来ない自分が悔しくて、死という未知の暗闇に有馬は手を差し出され抱き締められそのまま溶けて消えてしまう想像をしてしまって、ひたすら大声で泣いた。

しばらくすると私の泣き声を聞きつけた両親が駆けつけて、父は海へ向かった。
母は私を抱き締めた。
思えば抱き締められたのはあの時が最後かもしれない。

もっとも、私を落ち着かせるためじゃなく母は何かにしがみついてなければ保てないといった感じだった。

足にかかる水の重力に必死に抵抗する父の後ろ姿。
有馬はそれに気付き、逃げ出した。

恐怖から、現実から、父から。

だが次の瞬間有馬は暗闇に消えた。
溺れたのだ。
必死に有馬は真っ暗な空へ手を伸ばす。

母の叫び声、父の怒鳴り声、私の泣き声の中で……有馬は、掻き分けるようにもがいていた。

今でも鮮明に思い出せる。