「葵」

乱暴な車が相変わらず行き来している横で私たちは堂々と歩いていく。

なに、と惚れ惚れする笑みを葵は向けてきた。

――今は、もうこの人に不釣り合いな女だとは思わない。
この人から教わったのだ。
葵はそのままの私を愛してくれた。
不釣り合いだとか、そんなことは関係なかったのだ。

私といたいからこの人はいてくれる。
私も同じだ。
そこに引け目を感じる必要などない。
どうしても理由を求めたくなるが、何よりも単純なことなのだ。

「来週おばあちゃん家に行こうね」

「……つ、ついに挨拶か。緊張してきたー……」

深呼吸を繰り返す葵が可笑しくて笑う。
常日頃祖母と有馬の話をしているが、まだ会ったことはないのだ。
有馬は早く連れてこいと急かすが、私にも心の準備が必要だった。