また何か書いていることを予測し、広げる。
だが、予想と反した事に体を強ばらせ、反射的にそれを放り投げた。

「ひっ」

「こっちに投げるなよ!」

女子生徒と男子生徒が怯えた顔でそれを避けた。
私が投げた拍子に紙とそれは遊離し、それが再度心を強ばらせた。

ゴキブリだ。

誰が紙に包んだのか。
否、それよりも私の行動が推測されていたことに腹を立てた。

私が授業前に教科書を広げておくのも、紙を広げるのも予測されていたのだ。

既に小さな命を亡くしたゴキブリが今回ばかりは哀れに見えた。
私と同じ、ターゲットにされたのだ。
生徒たちは私とゴキブリを交互に見て、クスクスと笑い始める。

作戦成功、と喜び、片付けろよ、とニヤニヤとやらしい笑みをたたえながら野次を飛ばしてくる。

なのに、睨み付けることはおろか素直に指示に従う私にも腹を立てた。

惨めで、滑稽。

哀れな自分をもう一度紙に包んでゴミ箱に捨てた。