ドメスティック・エマージェンシー

「おはよう」

笑って挨拶をする。
あんなに恐かったクラスメイトたちが、谷口が、今は恐くない。

私よりも、彼らの方が怯んだ。
谷口は私に好意を寄せられたと勘違いしたのか、 頬を染める。
哀れに見える。

自分たちの置かれた立場をわかっていない。
何故、自分たちが私をいじめるのかも彼らはわかっていないのだろう。

可笑しくなってうつむいてほくそ笑む。

そうして一言――

「さようなら」

呆然とする谷口の横を通り、クラスメイトたちの傍らを堂々と過ぎる。

気持ち良い。
私の変わりように驚いているのだろう。
切符を改札口に入れて通る。

――さようなら。

あなたたちに怯えていた私よ。