家に帰り、ようやく呼吸が楽に出来るようになった。
ゼロもパソコンには向かわず、一足先にお風呂に入りに行った。

……私より女子力高いな。

呆れながら、彼の美貌が失われたときのことを想像して笑えない。
ふと気になった携帯を手に取る。

久しぶりに電源を付けると、思った通り着信と留守電とメールが入っていた。

葵と有馬とおばあちゃんだ。
……葵。

留守電に入れられた伝言を聞く。

『江里子』

久々に聞いた葵の声。
心が震え、涙が簡単に流れた。

『江里子、いつでも帰っておいで。俺は待ってるから』

――この人は、どうして。
どうして……こんなにも優しいのだろう。
切ない、愛しい、会いたい。
葵……

留守電を何度も何度も壊れたように聞いた。