「ゆう兄は知らなかったんだ。まさかそんなことが起きてたなんてね。遺書を見て初めて知ったみたいだった。……その頃かな、ゆう兄が可笑しくなったのは」

「……可笑しく?」

神妙な顔つきで頷いたあと、遠い目をしてなおは記憶をなぞった。

「情緒不安定って言うのかな、急に泣き出したり笑い出したり……無理もないけど。そしたらさ、いきなり施設を出て行ったんだ」

ぎゅっと唇を噛み締め、なおは机の一点をひたすら見つめた。
その時の想いを今味わっているに違いない。
何も出来なかった悔しさ、自分じゃ支えることが出来なかった無力さ、そして引き留められなかった不甲斐なさ。

今、彼の中で色んな感情が叫び嘆き暴れているのだろう。