「お前の未来を決めに行く」

「えっ」

マスク越しに通ってきた声は、なのにあまりにもはっきりと聞こえ途端に息を呑んだ。
ゼロは私の鎖骨に長い指をあてがって、そうして優しく押した。

「これから殺人を行う。それを見て、どうするかは自分で決めろ」

さっきまでのみすぼらしい彼は消えていた。
刃物のような声で私の頭を貫き、その行為への重さと冷たさを想像させる。
威圧感に気圧され、頷くのに遅れを取ってしまった。

「わ、かった……」

つまり、このまま彼の側にいるか、否か……それを決めろということなのだろう。

決心をしてここに来たのに。
揺らいだ。
帰りたい……葵の元へ。

思ってはならない思いが胸中をかすめた。