「行くで、江里子。準備せえ」

「……どこに?っていうかその仮面のまま行くの?」

すっかり忘れていたのか指摘され仮面をペタペタ触り始め、キョロキョロと辺りを見回している。
そこまでして外したくないのか、と呆れてしまう。

「私の前だけでも外したら?」

「アホ、未来がどうなるか分からへんのやぞ」

相変わらず用心深い。
信用されていないのだろう。
……当然と言えば当然だ、まだ出会って日が浅いのだから。

「ええっと……あ、あったあった」

私に背中を向け何やらごそごそしている。
部屋の雰囲気がそうさせているのか、ゼロの細い体のせいかもしれないがホームレスに見えてしまう。

私はそのみすぼらしい背中に声をかけた。

「ねえ、どこ行くのよ」

お目当ての物を装着させたらしい。
よし、と気合いを入れて彼は私に顔を見せた。
薄暗い中真っ白に浮かび上がる顔にはトレンドマークの唇が見当たらない。
マスクしているのだと気付き、マスクの白さに溶け込む肌に驚いた。

そして驚くほどに似合わないサングラスを見せてくれた。

「……完全防備だね」