「行くか?」
彼が私のほうを向く。
「えっ!?…えっと、はいっ!
行きますっ!
行きますともっ!」
ひゃああ、もう。
何、敬語になってんの、私。
そして
彼は立ち上がりスタスタと教室を出る。
え?え?
ちょっと待ってよ。
背の高い彼は当然、
足も長い訳で。
「待ってよ、中村くん!
速すぎるって!」
思わず声が出るけど聞こえないのか彼は振り向きもしない。
……ん?
でもなんで中村くん、
食堂の場所知ってるの?
あ、そっか、
事前に先生から案内あったのかな?
彼はすれ違う沢山の生徒たちの間を、
泳ぐように、
滑らかに、
迷うことなくさっさと歩く。
私は必死になってその背中を追う。

