「おい…どうした?葵」



ゆさゆさと、優しく揺さぶられる。



「ナルしかいないの。あたし…ナルに会いたい。好きなの、大好きなのっ」



「バカな女だな」



そう言って、懐かしい温もりに包まれる。



あ…この感じ。



あたしの求めていた、安心できる場所はここなのかと錯覚しそうになる。



「んっ…」



いきなり激しいキスをお見舞いされ、パニックになる。



「だめっ、セナくん…」



無理やり胸を押し返し、目の前の現実に驚愕。



あ…あ、れっ。



そこには、恐ろしい表情であたしを見つめる鬼が…いや、鬼より怖いナル様がいた。



「セナって…お前、一体どんな夢見てた?」



ゆっ…夢!?



目をぱちくりさせつつ周りを見回すと、やっとのことでここが移動中の車中だと気付く。



あたしの左隣には、スヤスヤと眠る…セナくんがいた。