「話はそれだけか?」



やっぱり…。



しかも、自分の親に対してだけど目上の人にこういう話しかたはどうかと思う。



さっきは、お父さんも殴りかけだったし。



まだ、リビングの隅っこにいるよ。



「そうね…だから、お願いします。大切に育てた娘だからこそ、辛い思いをさせたくないの。あなたといたら、きっと娘は不幸になる」



「てことは…俺に身を引けと?」



ナルの苛立ちが、オーラでわかる。



こっ、怖い。



この後、またさっきみたいなバトルに突入するの!?



そうなる前に、ナルを取り押さえるべきだよね。



身構えていると、お母さんが深く頷いた。



「少なくとも、今は…ね。ふたりには、周りを納得させる方法で、真っ当に生きて欲しい。逃げ隠れしながら生きるって、やっぱりどこか落ち着かないわ」



いつも笑顔を絶やさなかったお母さんだけど、実はそんな苦労があったなんて。



今になって、初めて知ったよ。



「納得させられないから、こうして追いかけて来たんだろ?」



呆れるようにして、ナルが息を小さく吐く。



「だから学園長と話したの。いい?3年間、死に物狂いでお互いのやるべき事を全うしなさい。

それだけ離れていても気持ちが離れないなら…本物よね。この件に関しては、学園長が全ての責任を持つって言っているわ」



「へぇ…叔母さんの言うことなら、確かかもな。あの人、俺にウソついたことないから」



厳しい人だけど、誠実…ってこと?




そういえば、前にナルとのことを聞かれたことがあったっけ…。



なんとかならないこともないって、言っていたような気もする。