「ふたりとも、これからここで一緒に暮らしなさい」





「ええっ?」





あたしは驚くけど、ナルはさほど驚いてないみたい。





「ふたりで1から始めるといいわ。その代わり、あたしたちはなんの援助もしない。学業はもう諦めるのね。食べていくためには働かないといけないわ。仕事だって、ここで自分たちで探すこと」





「たやすいな」




こっ…こいつ…。




どのツラ引っさげてそんなこと言ってるんだか。




外国で1から仕事を探す!?




そんなの無理に決まってる。




ナルは英会話なんて苦じゃないかもしれないけど、あたしはムリ。




「頼もしいわね。葵を任せるなら、そのぐらいの器がなきゃね。そこはクリア」




「で、あとはどんなハードルがある?色々吹っかけて、諦めさせようっていう魂胆だろ」




まさか、それをわかっていてあの返事?




そうだとしたら、この男侮れない。




「さすがねぇ。手の内バレてるんなら、率直に言うわ」




しかも、的中?




もう、あたしの出る幕なし。




終始黙りこむあたしを置いて、お母さんとナルとの一騎打ちだ。