それを知ってしまったから…もう、ふたりで先に進むことは許されない。



以前お母さんのところへ戻るために取っておいたチケットで、今夜のフライトを予約した。



その間に天音ちゃんから返信があった。



『葵ちゃんがいなくなるのはとっても寂しいし、ナル様とのこともとても残念ですが、葵ちゃんが決めたことなら応援します。また、いつの日か会えることを心待ちにしていますわ』



理解ある返事でホッとした。



天音ちゃんのことだから、泣きじゃくってるのかと思ったけど、大丈夫だったみたいだね。



ドレスは昨日クリーニングに出してクロークで受け取った後、今日付けで天音ちゃんの家へ発送済。



京子さんにも、連絡は入れておいた。



あとはもう…思い残すことはないよね。



あたしはもう、きっとここには戻らない。



そう思わないと、決心が揺らぎそうだから。



グッと気を引きしめ…スーツケースを手に、思い出深いこの部屋を去ることにした。