ナルも言葉を失っている。



まさかあたしが知り合いの孫だったなんて…って感じなのかな。



「会いたかった…葵は、心に良く似ているな。元気に暮らしていたのか?」



さっきまで怖かったおじさんの顔が、突然優しいものに変わった。



ただのおじいちゃんの顔になっていて、一瞬心をゆるしそうになるけど、あたしは気を引き締めた。




この人は、お母さんから全てを奪って、なにもかも自分の思いどおりにしようとした人…。



「あたしは、あなたの孫なんかじゃありません」



「なにを言う。私の孫だ、娘は…心は私の大切な…」



「母は、あなたの話なんて一度もしたことがありません。失礼します」



ソファから立ち上がり、周りが止めるのも聞かず歩きだす。



「待ちなさい。葵っ」



やっぱりあたしは、ここにいちゃいけなかった。



ドレスの裾を掴み、ホテルの外へ向かって走ろうとしたとき、ふわっと体が宙に浮かんだ。




…!?