《俺様的》彼女の手なずけ方

ちょうどチェックインの時間なのか、フロント前に一般の宿泊客が行列を作っていた。




静かなフロアをドレス姿に裸足で走る女と、スーツ姿の男。




それはかなり滑稽な姿に映っていたと思う。




全員が一斉に、あたしたちの方を見た。




「ドラマの撮影じゃない?」




誰かが、そんなことを言う声が聞こえた。




そう思ってくれるなら、恥ずかしさも少しは紛れる。




建物を出ると、すぐにナルがドアマンに声をかけた。




「俺が誰だかわかってるよな?なにも言わず、すぐに出してくれ」




「畏まりました」




恥ずかしいセリフを真顔で言っちゃうんだね。




俺が誰だかって、よっぽど自信がなきゃ言えないと思う。




こっちが恥ずかしくなるよ…。




「おい、なんで俯いてる?」




「なんでもない…」