ホールの外に出ると、入口に立っているスタッフらしき人が近づいてきた。




「どうされました?お気分が優れないのなら、あちらへ」




ソファを指差し誘導されそうになる。




体調が悪くて出てきたと思われた!?




眠いからなんて、とてもじゃないけど言えない。




大事になりそうだし、ごまかさなきゃ。




「いえ、ちょっとお手洗いへ…」




「それは失礼しました。こちらです」




ええっ!




案内してくれなくてもいいよ。




「大丈夫です、ひとりで行けます」




確か、エレベーターの近くにあったはず。




廊下を小走りに進み、角を曲がる。




はあっ…どこにいても落ち着かないよ。




こんなドレスも慣れないヒールも、もう脱いでしまいたい。




あたしには、どれも不似合だ。




ひとり静かにため息をついていると、ホールの方から喝采が聞こえる。




なにか大きな発表があったのかな…。




ナルが婚約者と登場したとか。




そうだよ、本来はそのお披露目会なんだもん。




この目で見るなんて清香さんには大見得きったけど、やっぱり無理かもしれない。




全てに圧倒される…。