「こんな日に最高の姿を見せられて、俺はどうすればいい?お前も、残酷なことするよな」




ドクンドクンと、心臓が高鳴る。




勘づかれてしまいそう。





「そんな…ドレスが似合う人なんて、山ほどいるのに」




「そういうことじゃない。髪だって…俺好みにわざとしたんだろ。俺を翻弄させて、面白いか?」




「違うの…そういうことじゃない。出席するには、それなりの格好をしないといけないと思ったからで…これも、借り物なの。髪型は、知り合いのアドバイスなの」




「へぇ、俺以外の男の意見を聞いたってわけだ」




「違うってば!もう、さっさと行きなさいよ」




「言われなくても」




こんなことを、言いたいんじゃない。




けど、きっとこれでいい…。




「さよなら…」




歩いて行く背中に、そっと呟く。




今度こそ、見守るから。




きっと…。