向こうに行くって言ったけど…あたしはまだしばらくここで生活するつもり。



天音ちゃんを置いて逃げることは、あたしにはできない。



電話をかけるけれど、もう寝ているのか誰もでなかった。



…寝ちゃったかな。



また、明日にでも電話しよう。



お母さんと話したいことが、山ほどある。



天音ちゃんのお母さんの代わりに伝えたいことも…。



あたしはペンダントを握りしめ、立ち上がった。



会場に早めに行こうかな。



タクシー会社に電話を入れ、到着時刻を早めてもらった。



迎えに来たタクシーに乗り、会場のホテルへと向かう。



ホテルに到着すると、ロビーで清香さんと出くわした。



うわ…あたし、ついてない。



あたしを見つけて、清香さんが満足そうに微笑む。



「あら…素敵なドレスね。髪をアップにしてこなかったの?斬新だわ」



もはや、誉められてるのか貶されてるのかわからない。




とりあえず、お礼を言っておこう。



「お誉めに預かり光栄です」



「だけど、エスコートする男性がいないなんて。おかわいそう」



え。