天音ちゃんの純情を踏みにじったよね。



こういうときに、冗談なんて言うものじゃない。



「いつものように、ナルの隠し撮りをするのかなって思っただけなの。ごめん、冗談のつもりで…。天音ちゃんは真剣に話してるのに」



申し訳なくて頭を下げると、天音ちゃんの目がウルウルしている。



「そうでしたか、葵ちゃんは優しいですね。わたくしの悲しみを、笑いで紛らわせようとしてくださるなんて」



そういうつもりでもないんだけど…天音ちゃんに冗談は通じないみたいだ。



ピュアだからこそ、誤魔化さず偽りなく話さないといけないよね。



「天音ちゃんは、まだナルのことを諦められないんだよね。

あたしはやっぱり身分不相応だから、これでよかったと思ってる…正直、色々と肩の荷がおりたよ」



これは、事実。



ここ数日、清香さんに敵視されなくなった。



スカイテラスの一件でニラまれるかと思ったんだけどね。



もしかしたら、ナルが清香さんになにかを言ったのかもしれない。



あたしの周りの人への嫌がらせも今のところないし、これでよかったと今なら思える。