ナルのそういう表情が、あたしに向けられるのは久しぶりで、空気がピリッと凍りついていくのを感じ取った。




「お前といた時間は、俺にとってもう全て過去だ。つまらない女と過ごした、無駄な時間を思いだすことなんて、もうない」




ズキッ。




冷たく言い放たれて、胸が痛んだ。




ナルはやっぱり冷酷で、残忍だね。




けど…そうでなくちゃ、あたしも振り切れない。




グッと唇を噛みしめていると、ナルがあたしに背を向けた。




「久々に俺を憎いと思っただろ?」




憎いなんて…そんな。




今の言葉を聞いて、辛くて胸が引き裂かれそうだった。




黙っていると、ナルが続けて話す。




「頼むから。そう思えるように、今ここで……立ち直れないぐらい俺を突き放してくれ」




まさか、そのためにひどいことを言ったの?




今はなんだか小さく見えるその背中に、抱き着きたい衝動に駆られる。